2024年8月14日(水)
太田昌克の視点
『太田昌克の視点』
戦争の影色濃く 非核哲学の継承を
2024年8月9日(金)放送分より
アメリカによる原爆投下から79年となった8月9日、長崎市では「平和祈念式典」が営まれた。長崎市の鈴木史朗市長はロシアのウクライナ侵攻や中東情勢に触れながら、核兵器の脅威が高まる現実を直視するよう訴えた。
ただ、今年の式典にパレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラエルが招待されなかったことから、アメリカやイギリスなどG7=先進7カ国のうち、日本を除く6カ国と、EU=ヨーロッパ連合は大使が欠席し、公使や総領事らが出席した。
非常に残念なことに、ガザとウクライナの戦争が人類全体にとって大切な平和の式典に暗い影を落とした形だ。
今回大使たちが出席しなかったある国の外交筋によると、鈴木市長が6月にイスラエルへの招待を留保したことに関係国は動揺。G6の駐日大使が協議し、ハマスのテロに対する自衛権を行使するイスラエルを、ウクライナを侵略したロシアと同列に扱うべきでないとの懸念を共有した。その上で、鈴木市長に翻意を求めて7月19日付で書簡を送付したが、市長はデモなどで「不測の事態発生のリスク」を考慮し招待を見送ったということだ。
死者が4万人に迫るガザ侵攻への被爆地市民の怒りはよく分かる。一方で、紛争当事国を含む全世界の市民に被爆の実相を伝える、核兵器を絶対否定してきた被爆地の「非核の哲学」を訴え続けることも重要である。
来年は被爆80年。わが身に何が起きたかも分からぬまま非業の死を強いられる核の非人道性、不条理を人間の尊厳という視点で人類の記憶に刻み続けたい。
※このコーナーでは、BS11の報道番組で放送した内容を元に記事にして掲載しています。
一部情報は掲載の時期によって更新されることもありますので、予めご了承ください。
▶️ 番組を見逃した方は・・・
報道ライブ インサイドOUT
毎週月~金曜日 よる9時00分~9時54分
【第5金曜日】鈴木哲夫の永田町ショータイム
太田昌克の視点
番組キャスターで共同通信編集委員、ジャーナリストの太田昌克が取材したネタを中心に、独自視線で語るコーナー。毎月第2・第4金曜日放送中。