2024年12月17日(火)
太田昌克の視点
『太田昌克の視点』
イラクと「相似形」 シリア内戦再燃も
2024年12月13日(金)放送分より
独裁体制のアサド政権崩壊で過激派の反体制派シャーム解放機構(HTS)がダマスカスを掌握、暫定政府が始動したが、不安定要素には事欠かない。
まずシリアはお隣のレバノン同様、民族と宗派が入り乱れる「モザイク国家」であるという点。HTSに加えて、クルド系の反体制派「シリア民主軍(SDF)」、トルコが支援する「シリア国民軍(SNA)」など、群雄割拠の状態だ。悲願のアサド体制崩壊を果たした今、実は暫定政府自体が将来的に烏合の衆となる可能性もある。
またシリアには多くの武器弾薬庫が各地に点在している。これが「イスラム国」(IS)などテロ組織等の武装勢力に流出しかねず、隣国イスラエルはすぐにシリア軍事拠点を空爆した。320カ所という報道もあるが、おそらく流出の事態を恐れて武器弾薬庫をたたきまくっているという状況だ。
さらに懸念すべきは、シリアには化学兵器もまだ残されている恐れがあることだ。2日前、生物・化学兵器対策を長年所管した元米国防総省高官に取材したところ、「大方は10年前に廃棄したが、神経ガスのサリンなどがまだ残っているかもしれない」という。
中東を長年ウォッチしてきた日本外務省のベテラン専門家は「今のシリアは2003年のイラクと相似形ではないか」と指摘。2003年のイラク戦争でフセイン政権は崩壊したが、その後、宗派間対立と残された大量の武器で内戦がずっと続いた。
シリアが同じ轍を踏まないよう願っているが、そのリスク、つまり内戦再燃の芽はまだ消えていない。
※このコーナーでは、BS11の報道番組で放送した内容を元に記事にして掲載しています。
一部情報は掲載の時期によって更新されることもありますので、予めご了承ください。
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番組キャスターで共同通信編集委員、ジャーナリストの太田昌克が取材したネタを中心に、独自視線で語るコーナー。毎月第2・第4金曜日放送中。