第10回  松本 豊饒なる山の恵みを味わう

文禄時代に建てられた日本最古の城「松本城」。北アルプスを抱いた威風堂々とした姿と季節ごとに見せる様々な表情が美しく、松本のシンボルとして親しまれている。四百余年の風雪に耐え、戦国時代そのままの天守を残すこの城は、国宝として名高い。さぁ、散策といくか。松本には"蔵"が多い。江戸時代、松本は北国西街道など主要街道の玄関口として栄え、物資の貯蔵を行う蔵が多く建てられた。さらに明治21年にこの地を襲った大火の教訓から耐久性の高い土蔵が多く建てられたとのことだ。大正、昭和のはじめに建てられた古典的な洋風建築もなかなかのもので、古き良き大正ロマンスを彷彿とさせる。夕暮れも近づいた、松本城の夕景とともに居酒屋へ。
「きく蔵」はその日のおすすめ素材がざっくりとカウンターに並ぶ。主人は和食一筋41年のベテランだ。まずは、山菜の王者"雪笹(ゆきざさ)"をいただく。雪の精のように清らかな味わいだ。次は"馬刺し"。肴のおともには"大雪渓 槍(だいせっけい やり)"。北アルプスの雪どけ水で仕込んだ辛口純米吟醸だ。すっきり旨い...。やっぱりお酒は水だ。濃厚な味の"馬刺し"とは憎らしいほど相性がいい。
あゝ、至福のひと時だ...。さぁ、もう一軒は本格バーといくか...。

<太田和彦さんが訪ねたお店>
きく蔵
長野県松本市大手4-7-10

メインバー コート
長野県松本市中央2-3-5