第55回  根津・日暮里 大人の下町・息づく江戸情緒

根津・日暮里 大人の下町・息づく江戸情緒 第55回

根津神社およびその門前町と、のちに旗本の居宅街となった徳川綱重の屋敷地をくわえた一帯を「根津」と呼ぶ。付近の谷中、千駄木とともに、情緒あふれる下町として人気を集め、国内外から多くの観光客が訪れる。今回は、まず国の重要文化財である根津神社を起点に、江戸風情香る町並みを歩く。 大正時代に創業した金太郎飴の老舗や根付の店に立ち寄りながら、ゆったり根津を抜け、日暮里に。明治5年創業の老舗蕎麦屋「川むら」は日本各地のうまい酒を置くこだわりの店。気の利いた肴も多く、まだ日の射す夕方間際にほろ酔い気分でシメのそばを啜る。夕暮れどき、駅前は一気に活気づく。となれば、居酒屋の立ち並ぶ「初音小路」にふらり、足は向く。 人気店「喜楽長」で、あなご、はもの板わさ、小柱のかき揚げなどつまんだら、上純米大吟醸をくいっと一杯。軽やかな酔いにまかせてそぞろ歩けば、趣の異なる路地裏の名店が手招きする。魚菜料理「うさぎ」は、ジャズの流れる、一品料理のうまい店。浅草生まれの気風のよい女将と語らいながら、吟醸酒をやる。ふぅーっ。鮎の風干しをつまんで、しばし下町の懐に身と心をうずめる。贅沢な時間が、ゆっくり過ぎていく...。

<太田和彦さんが訪ねたお店>
花影抄(根付)
東京都文京区根津1-1-14 らーいん根津202

小石川金太郎飴
東京都文京区根津1-22−12

川むら
東京都荒川区西日暮里3-2−1

うさぎ
東京都文京区根津2-16-2