第59回  文明開化の風に吹かれてふらり横浜散歩

文明開化の風に吹かれてふらり横浜散歩 第59回

 今回のふらり旅は横浜。文明開化のかけ声にぎやかなりし明治初期、いち早く西洋文化がなだれこんできた横浜は、混乱と繁栄が交差し日本の文化と融合した新しい文化が育っていった場所でもある。小さな港町が時代に飲み込まれ大いなる変貌を遂げた、その変遷の名残をたどりながら、そんな港町をふらり散策。
 横浜港を眼前に臨むおなじみの「山下公園」や、日本初のブルワリーのあった「麦酒工場の碑」、ほか断髪令により登場したザンギリ頭を記念した「西洋理髪発祥の碑」というモニュメントを横目に、まずはランチの名店へ。
 「勝烈庵」は昭和2年に創業した洋食屋。外国人シェフが居留地内にもたらしたカツレツを、初代が工夫を重ねて和風の"トンカツ"を完成させた。ししみ椀、おしんこの付く名物「勝烈定食」は、肉のうまみを引き出す特製ソースとヒレ肉が見事に調和して絶妙な味わい。 大満足の胃袋をいたわりつつ、外人墓地のある山手地区などを散策する。
 ハイカラなムードを満喫したら、夕方は伊勢崎町通りをぶらり散歩。4丁目には名曲「伊勢崎町ブルース」の楽譜を刻んだパネルがあって、ボタンを押すと哀愁のメロディが流れる。この界隈には何回か通った名物酒場があり、その名を「栄屋酒場」という。殻付きカキ、ブリ差し、カツオ、シメサバ、あなご天...。魚好きにはこたえられない美味の数々が並ぶ。美酒とともに自慢の魚料理に舌鼓を打つ。いきおい、馴染みの主人との会話も弾むというもの。ほろ酔い気分で夜の山下公園を歩く。港の風に誘われるように、これまた馴染みのバーをのぞく。「スリーマティーニ」は野毛からここ山下町に移転した横浜を代表する店。いつものジントニックをやりながら、横浜の夜の顔とじっくりご対面。そう、横浜はバー発祥の地でもある。料理、酒、店、音楽...。目に舌に耳に、みごとに和洋の共存した文化を満喫した。

<太田和彦さんが訪ねたお店>
勝烈庵
横浜市中区常盤町5-58-2

栄屋酒場
横浜市中区 長者町 9-175

スリーマティーニ
横浜市中区山下町28