第17回  フランス×スペイン『350年以上変わらない国境がはらむ民族独立問題』

国境ハンター:真凛

世界の国境を歩いてみたら・・・ 今回の舞台はフランス×スペイン...A面では、国境ハンター・真凛が国境線の西から東までを国境のピレネー山脈に沿って歩き、各地方に根強く残り、また現在進行系の独立問題を探る。
東西におよそ620キロの国境線が引かれているフランスとスペインの国境線は、350年以上もの間、変わっていない。近世に入っても頻繁に領土と国境線が変化し続けたヨーロッパの中では特に珍しい国境線だ。旅のはじまりは国境の最西端から。フランスの最も南西に位置するリゾート地・アンダイエでは、国境線を定める条約が結ばれたフェザント島を発見。
そして、国境を渡り、向かったのはスペインの国境の街・イルン。ここで、街の雰囲気がアンダイエと似ていることに気が付く国境ハンター。街の人に話を聞くと、実は元々このあたりはバスク地方と呼ばれ、バスク人という民族が国境にまたがって暮らしていることを知る。バスクの著名人で日本人に馴染みがあるのは、宣教師フランシスコ・ザビエルやキューバ革命の指導者チェ・ゲバラなど。イルンではバスク人の民族衣装が起源となったベレー帽の工場も訪問。この工場のベレー帽はチェ・ゲバラも愛用していたという。バスク人で工場スタッフのアスティラガさん(50)から、バスク人の歴史やかつて独立運動が盛んだった時の話を聞く。
そして、国境を東へと移動。世界遺産であるフランスのガヴァルニー圏谷で馬でのトレッキングにチャレンジ。標高3000mを超す雄大な山々。この山々が、かつて北アフリカからイベリア半島へと侵入してきたイスラム勢力がフランス側へ侵攻するのを防いだことを知る。さらに、国境沿いに暮らす羊飼いとの出会い。羊の移牧はピレネー山脈でバスク人がはじめたのが発祥だと言われている。古来より守られてきたピレネー山脈とともに生きる人々の知恵を体験する。
さらに、国境の東側にあるカタルーニャ地方へと移動。ここにも国境をまたがり、カタルーニャ人という民族が暮らす。スペイン側のカタルーニャ州では独立をめぐるニュースも記憶に新しいが、まずはフランスとスペインの国境に挟まれた小国・アンドラ公国に到着。国土は東京23区よりも小さい。住民の大部分はカタルーニャ人で1993年に独立した国家(国連にも加盟)であるが、EUには加盟していないことから税率が安く、近隣の国々から買い物客が訪れる。アンドラの主要産業であるタバコ店を訪れ、独立のメリット・デメリットを聞く。
続いては、街の真ん中に国境線がある珍しいフランスの村、ル・ペルテュへ。ピレネー山脈の要衝として古くからカタルーニャにとって重要な場所であることを知る。古くから両国にまたがる街の人に、カタルーニャの独立をどう考えているのかを取材。街の住人ソニャさん(37)は「独立運動には反対しないが、それにより血が流れるのは嫌だ」と語った。それはかつてバスク地方で行われてきたテロなどを見てきたからだという。旅のラストは国境の最東端の地へ。大西洋から地中海へ抜けた600km以上の国境の旅を締めくくる。