第59回  初秋の一乗寺をゆく~詩仙堂・圓光寺・曼殊院門跡~

解説:桐浴 邦夫(建築史家・京都建築専門学校副校長)

京都が美しさを極める秋。紅葉の名所は数あれど意外にも知られていないのが、京都市の北部、一乗寺界隈。今回は、秋の紅葉シーズンにぜひ訪れて欲しい一乗寺の魅力を紹介する。
名刹が数多く集まる一乗寺の中でも人気が高いのが詩仙堂。江戸時代の文人・石川丈山が晩年を過ごすために建てた山荘跡だ。漢詩や書道、茶道や庭園の設計など丈山の才能が遺憾なく発揮された空間で、その美意識に触れ、彼の辿った数奇な運命に思いを馳せる。 詩仙堂から少し歩いたところにある圓光寺は、徳川家康ゆかりの寺院。教育・学問の発展を図るために建てられた圓光寺最大の魅力は、見事な庭園の美しさ。苔庭と紅葉が額縁からあふれんばかりの風景で訪れる人を楽しませてくれる。 圓光寺からさらに北東へ歩くと曼殊院門跡が姿を現す。天台宗・京都五門跡のひとつ曼殊院は、小さな桂離宮とも呼ばれる名建築が魅力。 京都三名席のひとつ「八窓軒」をはじめ、釘隠し、引手に至るまで中興の祖・良尚法親王の美意識がそこかしこに息づいている。  街中の喧騒から離れた一乗寺で、輝く秋を見つける旅へ誘う。  

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