第87回 京の名塔参り~戦火を逃れた古塔~
解説:冨島 義幸(京都大学大学院工学研究所 教授)
平安時代、都の人々の間で「百塔参り」という巡礼が流行した。当時の平安京の周辺には、八角九重塔など今では見られない高層な塔から石塔まで大小様々な塔が100以上も建っていた。今回は、京都の塔のスペシャリストとともに令和の時代の「京の名塔」を巡る。
はじめに訪れるのは、東山のランドマークになっている法観寺の五重塔。古くから「八坂の塔」の通称で親しまれるこの塔にまつわる不思議な伝説や見どころを紹介する。
次に訪れたのは、伏見区にある世界遺産・醍醐寺の国宝・五重塔。幾度となく行われた解体修理によって、千年以上も建ち続ける京都最古の木造建築物だ。こちらでは平安時代の技術力の高さとともに高い塔に共通する弱点にも触れる。
他には、京都最古の多宝塔と言われる宝塔寺の多宝塔や、平安時代の終わりに御所のそばから姿を消した浄瑠璃寺の三重塔の魅力も伝える。
古の塔が伝える先人たちの「百塔参り」に込めた気持ちに思いを馳せる。