第19話  特別なバイト

botabara_19.jpg ぼたんと香世が別れ別れになったまま、七年の歳月が流れる。平成四年十二月、二十一歳になったぼたんは青山の洋装店で働いていた。鏡子は卵巣の摘出手術を受けてから体調がすぐれず、思うように働けなかった。大学受験を控えた和人のためにも、ぼたんは高収入のアルバイトが必要だった。そんな折、鏡子が手術不可能な子宮癌だとわかる。和人が進学をあきらめるというので、ぼたんはついに、デートクラブで働く決心をする。初仕事の夜、ぼたんは待ち合わせの喫茶店へ行く。まもなく、客がやってくるが、その男の顔を見て、ぼたんは息を呑む。豊樹だった。