第101回  夏の涼を求めて~大原・山野草の寺~

今回は、市街地のうだるような暑さから抜け出し、涼を求めて花と緑が美しい左京区の大原へ足を延ばす。
最初に訪れるのは、「天台声明」大原流を伝承する寺院の一つ、勝林院。声明とは、経文や真言に旋律と抑揚をつけて唱える仏教声楽曲のこと。緑の杉苔に覆われた美しい境内に、住職の伸びやかな声明が響く。
次に訪れるのは、勝林院のすぐ隣にある宝泉院。かつて勝林院の修行僧たちの住まいだったところで、額縁庭園と呼ばれる見事な庭が有名だ。さらに廊下の天井には伏見城の遺構である「血天井」もある。
少し涼しくなったところで、四季折々の花々が心を潤してくれる実光院へ立ち寄る。大原の山並みを借景として取り入れた池泉回遊式庭園には、様々な種類の山野草が咲き乱れ、庭を眺めながら和菓子と抹茶も楽しめる。
最後は、大原の里のさらに奥、人家もまばらな山の中にある古知谷・阿弥陀寺を訪ねる。こちらは隠れた紅葉の名所として知られる寺で、庭園には楓が視界いっぱいに広がる。また、境内には高山でしか見られない貴重な山野草も育てられており、訪れる人の目を楽しませてくれる。夏の大原で、美しき山野草と声明の旋律に触れる。

京都浪漫 悠久の物語 京都浪漫 悠久の物語