第29話  旅立ちの日

sakuroma_29.jpg 秋嫣の旅立ちを前に梁翊は荒れていた。残り少ない時を共に過ごして離れ難くなることを恐れて劈柴処で過ごしていた梁翊だが、見かねた宋錦に貴重な時を無駄にするなと諭されて思い直す。しかし、走って戻った屋敷に秋嫣の姿はなかった。朝早く屋敷を出たきりだという秋嫣を街じゅうを探し回るが、どこにもいない。もしや、すでに別れも告げずに旅立ってしまったのだろうか。夕暮れ時、秋嫣を見送るはずだった北門にたたずむ梁翊の姿があった。