第13話  反発

子どもの頃から自分よりも成績が良く、伝右衛門にかわいがられている猛への反発は、文彦の心にずっとわだかまっていた。文彦は猛に対してつねに横柄な態度をとり、嫌味な言葉を投げつけるのだった。ある日、文彦は著名な植物学者の講義を聴講したいといって、伝右衛門から費用を出してもらい、東京へ出かけていった。翌日は伝右衛門と絹も外出。ひかるはこの機会を持っていたかのように、猛に活動写真に連れていってほしいとせがむのだった。猛は困った。当時の女学生は、許可された映画のみ、父兄同伴で鑑賞することが認められていたのだった。