第36話 帰郷
何事も家のため、小作人達のためと、ひかるは泣く泣く勇作の妻になる決意をした。早速、勇作から結納の品が届き、その翌日、ひかるは勇作の家に招かれた。勇作の母静子は、格式高い三枝家の娘をもらえるとあって大喜び。ひかるにさかんにちやほやするのだった。東京で洋裁の専門学校に行っている勇作の妹秀子も、結婚式のために帰郷していた。刻一刻と婚礼の準備は進み、いよいよ明日が当日と迫った。すべてをあきらめたはずのひかるだったが、いざとなると猛への想いが募った。猛に、一緒に逃げてほしいと訴えた。猛はひかるの気持ちをしっかりと受けとめた。その夜二人はこっそりと家をぬけだした。