第40話  繁栄

昭和二十五年。この年の六月に始まった朝鮮戦争の軍需景気のおかげで、大河原家はますます繁栄していた。従来の割烹旅館のほかに派手なキャバレーを回転させ、勇作の妹秀子がマダムとしてとりしきっていた。ひかるはこの八年間、勇作の妻として、精一杯旅館をきりもりしてきた。が、子供もなく、おじの政之助以外とはうちとけて話すこともなかった。一方、三枝家は農地改革で昔の面影は全くなくなっていた。絹の着物を売って、かろうじて生計を立てていた。その頃、東京では、文彦が借金で窮地に陥っていた。