#1  第一部 遥かなる故郷(前編)

幕末の南部盛岡藩、吉村貫一郎と大野次郎右衛門は幼馴染として成長した。貫一郎は幼い頃から思いを寄せていた百姓の娘しづと祝言を挙げ、文武に精進して子にひもじい思いはさせぬ、病であれ戦であれ幼子を残して死なぬ、と二つの誓いを立てる。それが貫一郎の家族に対する「義」だった。貫一郎は藩校で助教として教えながらも身分の低い足軽同心で、生活は楽ではない。度重なる飢饉の中、志あるものは京へ向かっていた。