第21話
ドイツ人と交流のあった景清がスパイ容疑で検挙された。天堂にとってはまさに喜ぶべきことで あったが、なぜか天堂の胸は弾まなかった。柳子のことが気がかりだったのだ。朝倉家では景清を中傷するビラが塀に貼られたり、暴徒が押しかけてきたり、柳子らは追いつめられていた。柳子は陸軍大将の肩書を持つ北大路侯爵に力を貸してもらおうと出かけた。が、途中、中学生たちにとり囲まれ、石つぶてを投げられた。その危機を救ったのが天堂ーー。柳子は天堂が自分のことを心配してくれていたのを喜んだ。天堂は自分の気持ちをごまかして、柳子を罵倒して去った。