第27話
景清の密葬は、ごく内輪だけの者によってしめやかに行われた。貴久子らにさからえず、柳子は結局小切手を天堂に返しに行った。天堂は柳子の前で突然、土下座をしたかと思うと、償いとして自分は一生朝倉家を守ると訴えた。そして、母のために景清の遺品を分けてほしいと申し出る。柳子が帰った直後、天堂に赤紙が届いた。明日、麻布第一連隊に出頭すべしとの命令。復讐をやめて、天堂が新しい生き方をしようと決めた矢先の皮肉な知らせだった。その夜、天堂のために、柳子はこっそり父の遺骨を持ち出そうとした。それを見つけた貴久子は烈火のごとく怒った。