第39話
昭和23年、柳子が圭吾と結婚してから3年の歳月が流れようとしていた。圭吾は元華族の所有する美術品の仲介業を手がかりに、金融業、小豆相場、運輸業・・・と次つぎと金の掛かりそうな仕事に手を伸ばしていった。金銭至上主義の夫婦を、世間の人は"蝮男爵と夜叉夫人"と噂し合ったが二人は意に介さなかった。琴子はそんな姉の豹変ぶりを冷やかな目でながめたいた。特に、恋人のアメリカ人の少尉との仲を裂かれてからは、柳子に挑戦的な態度をとる。クリスマスの夜、朝倉家では事業の発展を祝って盛大なパーティーが開かれた。そこに一人の男が現われた。