第九話 吉良邸討ち入り(中編)
討入り前日、十二月十三日・・・。長江長左衛門という名で小さな町道場を開いていた堀部安兵衛は、同居の義父弥兵衛、妻と、別れの水杯ではなく、出陣の祝い酒を汲み交わした。貧しいなりをして煤払い用の笹竹を売り歩いていた大高源五は、両国橋でかっての俳諧の師・宝井其角とバッタリと出逢う。羽織を着せかけられ、年の瀬や水の流れと人の身は・・・と付け合いの句を求められて、大高はニッコリ笑う。あした待たるる、その宝船。この日、雪はしんしんと降っている。大石内蔵助は、ついに迎えた一挙の報告のために赤坂南部坂に瑤泉院を訪ねた。ところがそこには、色部又四郎が送り込んだ密偵梅の腰元姿がある。それと察知した内蔵助は、他家に仕官が決まったのでその挨拶に来たと嘘を言い、瑤泉院を激怒させた。不義不忠の臣、犬侍と罵って席を立っていく瑤泉院。仕方なく内蔵助は、腰折れと称して連判状をお供の戸田局にわたし、去っていくのであった。