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2026/11/02 18:38

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めちゃコミ新レーベル「HACHA」誕生の裏側 ヒット担当編集者・千代田修平が語る、ジャンル不問の“バラバラな作品”に込めた熱量

めちゃコミ新レーベル「HACHA」誕生の裏側を語った千代田修平 (C)ORICON NewS inc.

 電子コミック配信サービス「めちゃコミック」が手がける注目の新レーベル「HACHA(ハチャ)」が10月5日に創刊した。立ち上げに際し、編集委員の千代田修平氏にインタビュー。新たな場所で未知の領域に挑む心境を「新しい刺激や新しい楽しさ、なんなら新しい苦しみを含めて全てが経験したことがないものだったので、それ自体の楽しさを十二分に感じながらやってきた」と語る千代田氏に、読者が最も集まる最前線でチーム一丸となって新たな表現へ挑む熱気と、新レーベルに込めた思い・意図に迫った。(取材・文:遠藤政樹)  「HACHA」は、「めちゃコミック」発の少年・青年向け漫画レーベル。「めちゃコミック」の“めちゃ”と組み合わせ「はちゃめちゃ」になる言葉遊びから着想し命名された。編集長は『孤独のグルメ』『アラサーちゃん』などを担当した牧野早菜生氏が務める。

 10月25日には、三省堂書店 神田神保町本店で編集部の編集者全員が参加する初の出張編集部を開催するなど、新たな才能との出会いに向けた活動も進めている。

■立ち上げの8ヶ月は「まるで青春」

 新たな環境でゼロからレーベルを立ち上げる。ヒットの方程式が存在しないエンタメの最前線において、自らのキャリアを賭ける挑戦であり、激務と背中合わせの険しい道でもある。大手出版社から移籍し、新レーベル「HACHA」の立ち上げに挑んだ千代田氏は、準備に奔走した8ヶ月間を、「あっという間だった。文化祭が続いているような青春と呼んでもいいほど充実していた」と振り返る。

 転職や新レーベルの立ち上げにはリスクや不安がつきまとう。しかし、千代田氏にはリスクや不安定さこそが、最大の原動力を生み出す源泉でもあった。「不安はありましたけど、その不確実性、リスクを負っていることが生きがいというか渇き、ヒリつきを満たしてくれるものだった。それを求めに来たところも」と話す。

 先の見えない不確実性の中に自ら飛び込むことで自身のクリエイティブを刺激したことで、「作家の皆さんは明日も分からぬ世界でしのぎを削ってやっておられる」と過酷な世界で表現を模索する作家目線により深く寄り添えたといい、「ある種、作家さんの目線に近づけたのではと実感できたし、味わえたのは良かった」とうなずく。

 未経験の事態に「現場はてんやわんや」と笑いつつ、「集まったメンバーは各自の編集者としてのキャリア、ひいては人生の全てで培ってきた経験と能力を全力で発揮せざるを得ない状況」と千代田氏。「良くも悪くも追い込まれていて、その結果みんなの120%の力が発揮されているのを自分も含めて感じます」と明かす。

■読者が最も集まる最前線へ 電子書籍時代における新たな表現の挑戦

 紙媒体から電子書籍プラットフォームへと漫画業界の主戦場が移りゆくなか、作品を読む媒体が変わったという表面的な現象にとどまらず、作品が読者と出会うスピード感や表現の到達度そのものを根本から変革している。

 その真意を千代田氏は、「かつては紙の雑誌に読者が多くて、その読者に向けて表現をぶつけることが漫画の最先端だった。今は読者が一番いる場所は電子書店、めちゃコミックをはじめとした電子漫画のプラットフォーム」と前置きし、「読者が一番いる場所に新しい表現をぶつけるのは、漫画の歴史においても自然なこと」と自身の言葉で分析する。

 時代の変化に即し、最も大きな波が生まれている電子コミックの最前線に身を置き、そこで新たな挑戦に加わることに対して、千代田氏は格別のワクワク感を抱いている。「今その最前線に自分がいてチャレンジに参加できることをとても楽しく、ワクワクする」という言葉からは、最先端の現場で新しいカルチャーを創出することへの揺るぎない手応えが伝わってくる。

■作家が誇りを持てる「ホーム(居場所)」づくり意識

 電子コミック市場の拡大に伴い、新規レーベルが次々と立ち上がる現状において作家が持てる才能を遺憾なく発揮するには、レーベルが作家にとって精神的な拠点であり、誇りを持って創作に没頭できるホーム(居場所)として機能することも重要な価値を持つ。

 千代田氏は現在の業界動向を踏まえ、「作家が『ここが私のホーム』『ここが僕の居場所』と思える編集部を作るのは難しいことなのではと思っていて。作品を載せるための媒体になってしまうことが往々にして起こりがち」と課題を指摘する。

 その上で「HACHA」が目指すのは、単なる掲載媒体を超えた確固たるブランド思想の構築だ。「『HACHA』で描いていることを誇りに思うとか、『HACHA』に所属している安心感があるとか、自分以外の漫画家が頑張っているから私も頑張ろうといった仲間意識を醸成できる場所にしたい」と思いをはせる。

 作家にレーベルを居場所と認識してもらうため、「HACHA」は多角的なブランディング戦略を展開。「私たちはこういう存在、こういうスタンスというのを強く打ち出す必要がある」と語る通り、その姿勢はあらゆるアウトプットに貫かれている。具体的には紙の始動準備号、視覚的に独自の世界観を提示するWebサイトのデザイン、レーベルの裏側や熱量を届けるポッドキャストの配信、意欲的な才能を発掘する新人賞のデザインなどを通じ、「『HACHA』はどのような思想を持った場所なのか」を表明し、居場所として認識してもらうことを目指す。

■作家と同じ熱量で並走 理想の編集者像と「愛」を持ったサポート

 作品が誕生する過程において、編集者の役割は原稿の進行管理や校正にとどまらない。作家の内面にあるアイデアを汲み取り、それを市場に届く最高のエンターテインメントへと昇華させるプロデュース能力が、作品の成否を分ける重要な要素の一つ。千代田氏が描く理想の編集者像とは、「作家自身が思う以上に良い形で作品を引き出し、多くの人に届ける手伝いをする存在」だ。

 「作家さんが自分の描きたいものを純粋な形で描き、それをできるだけ多く広めるお手伝いをするのが編集者の役割の全て」と口にし、編集者と組むことで作家自身が「私はこんなことが描きたかった」という再発見や、「こうするとより自分の描きたいことが表現できるな」と感じられるような変化を引き出すことが本質だと語る。そうした能力を持つ編集者が結集する組織を作ることが、千代田氏の描く編集部の理想だという。

 理想の実現に最も大切にしているのは、「担当している作品と作家さんを、できる限り愛すること」。創作の道のりは平坦ではなく、作家が時に壁にぶち当たり、走り疲れて立ち止まりそうになる瞬間が必ず訪れる。「作家さんが最も作品を愛しているけど、少なくともその次、同じくらいの次元で愛して、作家さんが走っていてつらくなって一息ついたときには『ちゃんと隣にいるよ』『俺も走っているよ』という存在。よく伴走者と言いますけど」と語る。

 「作家さんがつらくなったとき『あれ?誰もいない。一人で走っているのか?』となるとキツいと思う。自分も同じだけの熱量で一緒に走っている姿勢を示すことは当たり前だけど、忘れられがち。自分は常にそうありたい」と時には失敗や力不足を感じる理想論であることを認めつつ、誠実な伴走姿勢を貫き続けることを自らに課している。

■ジャンル不問の極彩色ラインナップに「あなたのための一冊」が見つかると自信

 読者の趣味嗜好が細分化し、多種多様なエンターテインメントがある現代において、画一的なトレンドのみを追求することはリスクを伴う。あえて特定のジャンルに縛られず、バラエティに富んだ尖ったラインナップを提示することは、幅広い読者層の関心を惹きつけ、個々の読者にとって特別な作品との出会いを創出する。

 「HACHA」第1弾としてスタートを切る6作品、そして年度内に展開を予定している作品について、千代田氏におすすめの作品を聞くと「全部としか言いようがない」といい、「本当にバラバラな作品。ジャンルがバラバラというレベルのみならず、掲載誌がバラバラと感じるほど」と表現する。

 一見すると統一感のないラインナップは、緻密な計算や市場の流行追いから生まれたものではない。各編集者がそれぞれの「好きな作家」と「好きなもの」を純粋に追求し、作り上げた結果として生じたバラバラさ。千代田氏はこの「バラバラさ」の中にこそ、読者に対する最大の価値があると確信している。「バラバラだからこそ、どれか一つぐらいは『これは私の好み』『自分に向けて描かれた作品』と思えるものが見つかるのでは。それを期待して読みに来てほしい」と呼びかける。

 さらに「年度内にローンチしている作品もすべてバラバラ。各編集がそれぞれ好きな作家と好きなものを作る方針で始めるので、読者の方も自分に向けた作品が見つかるはず」と太鼓判。レーベルカラーに作家や編集者を当てはめるのではなく、個々の熱量をそのままに作品化を目指すからこそ、読者は「自分のために書かれた漫画が見つかると思う」と力を込める。

■求むのは「冷静に、狡猾にかます」才能 強固なチーム体制で挑む漫画界の革新

 レーベルが拡大し旋風を巻き起こすには、鋭いエッジを持った新たな才能(作家)と、それを支え志を同じくする仲間(編集者)が欠かせない。どのような才能を求め、どのような体制で迎え入れるのか。未来のクリエイターに対し、千代田氏は「かまそうとしている作家」を熱望する。

 千代田氏が求める「かます」という言葉の真意について、「かますというと、どうしても情熱や勢いといった初期衝動を連想しがち。そうではなく冷静に、狡猾に、慎重に、徹底してかますことを目指してほしい」と持論を展開する。

 勢いだけでかます、暴走的な姿勢は甘えや楽な方向への逃げにもつながりかねず、空回りに終わってしまう危険性も。プロの表現者がひしめく現場では全員がかまそうとしているからこそ、「本当にかますためには冷静な、慎重な、そして計算高くて狡猾な、そういったかましこそが本当に届くかましになる」と高いハードルを課す。

 編集部員は全員が実績を持って参入してきた転職組の精鋭集団で、各自の経験値を集約してチーム戦で作品を支える体制を完備。「個人というよりはチームで戦っているので、ネームを見せ合ったり、意見を仰いだり、取材協力を他の編集の作品に対しても行うなど、チームで作品を支えていく体制が整っている」と語り、作風に合わせた最適な編集者のマッチングや、万が一相性が合わない場合でもチーム内で柔軟に引き継げる体制が、作家にとって大きな魅力と安心材料になることを強調する。

 最後に千代田氏は、未来の仲間や読者に向けて熱いメッセージを送る。

 「全ての漫画家さん、そして全ての読者が「まずは「HACHA」で描きたい「HACHA」で読みたいと思ってもらえる編集部にしていきたい。まだまだ仲間を募集しているので、興味がある編集者でも作家さんでも、仲間になりたいと思った方はぜひコンタクトを取っていただければ」

 その言葉に通じる取り組みとして、HACHAは10月25日、三省堂書店 神田神保町本店で初の出張編集部「HACHA 出張編集部 #0」を開催した。編集部の編集者全員が参加し、完成原稿やネーム、過去作の持ち込みを受け付けた。

 計算し尽くされた戦略的で「狡猾にかます」クリエイターと、百戦錬磨の編集者がチーム戦で寄り添う強固な制作体制。この二つが融合したとき、「HACHA」は電子コミック界にこれまでにない鮮烈な旋風を巻き起こすに違いない。作家、編集者、そして読者を取り込みながら、大人の青春を駆け抜ける新レーベルの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

■HACHA連載予定作家 一覧(※五十音順、敬称略)
イララモモイ
大橋裕之
大林あきら
おかくーこ
丘邑やち代
奥嶋ひろまさ
キタガワシュンヤ
樹林まきらむ
楠 桂
久住昌之×鈴木絢子
津田沼 篤
西宮瑠花
本田優貴
森 巡る×がぶと
山崎紗也夏
ライトハンド/neostory
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