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2026/08/25 08:30

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NEW 死喰い人はなぜ恐ろしく見える? 映画「ハリー・ポッター」振付師が明かすハロウィーン企画の舞台裏

映画「ハリー・ポッター」シリーズで杖を使った魔法戦「ワンド・コンバット」の動きを生み出した振付師のポール・ハリス氏 (C)ORICON NewS inc.

 映画「ハリー・ポッター」や「ファンタスティック・ビースト」シリーズの制作の舞台裏を巡りながら、魔法の世界を体験できる施設「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(東京・練馬区)。9月10日から11月8日まで、開業以来初のハロウィーン特別企画「闇の魔術のハロウィーン」が開催される。  期間中、スタジオツアー東京は“闇の魔術”が渦巻くスリリングな魔法界へと変貌する。大広間には無数のジャック・オー・ランタンが浮かび、館内のいたるところには、闇の帝王ヴォルデモート卿に忠誠を誓う死喰い人(デスイーター)が出現。危険で不穏な空気に包まれた、ハロウィーンならではの体験ができる。

 本イベントの目玉となるのが、魔法省のセットを舞台にしたライブパフォーマンス「デスイーター デモンストレーション」だ。ロンドンのスタジオツアーで人気を博した演出が日本に初上陸し、死喰い人たちが来場者を映画さながらの“闇の魔術”の世界へと引き込む。

 演出と振付を手がけるのは、映画「ハリー・ポッター」シリーズで、杖を使った魔法戦「ワンド・コンバット」の動きを生み出した振付師、ポール・ハリス氏。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007年)以降、魔法使いたちの戦いに優雅さと脅威をもたらした、独自の“身体言語”を作り上げた人物だ。

 「デスイーター デモンストレーション」では、映画で用いられた攻撃と防御、計10種類の杖のポジションを基に、ダンスを思わせる流麗な動きを組み合わせ、死喰い人の威圧感と不穏な存在感を表現する。

 ハリス氏に、「デスイーター デモンストレーション」の見どころや「ワンド・コンバット」誕生の舞台裏、映画第1作の公開から25周年を迎えた「ハリー・ポッター」シリーズが、今なお愛され続ける理由を聞いた。

■デヴィッド・イェーツ監督からの一本の電話

 「ワンド・コンバット」は、デヴィッド・イェーツ監督からかかってきた一本の電話をきっかけに誕生した。

 2006年6月のある日、ハリス氏のもとにイェーツ監督から電話がかかってきた。

 「彼は『君にやってもらいたい仕事がある』と言いました。『ハリー・ポッター』は、デヴィッドにとっても、それまでよりはるかに大きな仕事でした」

 二人の関係は、それより約10年前にさかのぼる。7歳からダンスを学び、その後は俳優として活動していたハリス氏は、1997年、ある映画の脚本に書かれたダンスについて意見を求められた。脚本を読み、自分の考えを伝えると、その48時間後には撮影地のマン島へ向かう飛行機に乗っていたという。

 現地で出会ったのが、長編映画デビュー作『The Tichborne Claimant』(1998年公開)を撮影していたイェーツ監督だった。偶然にも二人は同じ町の出身で、年齢も近かった。その後もテレビシリーズなどで仕事を重ね、友人としての関係を築いていった。

 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で初めて「ハリー・ポッター」シリーズの監督に抜てきされたイェーツ監督は、ハリス氏に魔法使い同士の戦闘を表現する新たな動きの体系づくりを依頼した。

 「デヴィッドは何度も、『ダンスのようでなければいけない』『優美さと芸術性が必要だ』と言っていました。一方で、『武術映画のようには見せたくない』という要望も明確でした」

 剣術のような動きにすれば、魔法使いではなく戦士に見えてしまう。しかし、観客には命を懸けた戦闘として感じてもらわなければならない。そこでハリス氏は、過去のシリーズを改めて見直し、原作にも目を通した。

■呪文ごとのポーズでは成立しない

 イェーツ監督から「呪文ごとに決まった動きを作ってほしい」と求められたものの、ハリス氏は「それはできない」と伝えた。

 過去の作品には、すでに魔法戦の原型となる動きがあった。アラン・リックマン演じるセブルス・スネイプや、ケネス・ブラナー演じるギルデロイ・ロックハートの構えには、フェンシングやステージコンバットの影響が見て取れたという。

 また、第2作『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002年)では、決闘クラブでハリーとドラコ・マルフォイが異なる呪文を唱えながら、同じような構えを取っていた。

 「一つの呪文と一つのポジションを結び付けることはできないと思いました。今後の映画には、声に出さずに使う無言呪文も登場します。呪文ごとに専用のポーズを作れば、魔法の世界はすぐに窮屈になってしまいます」

 そこで着想を得たのが、ハリス氏が長年親しんできたバレエだった。

 「どれほど複雑な振り付けであっても、バレエの動きはすべて5つの基本ポジションから派生しています。魔法の動きも、同じように作れるはずだと考えました」

 さらに当時、娘が学んでいた伝統的な中国武術「虎鶴双形拳」にも目を向けた。バレエの基本姿勢とカンフーの構えに共通点を見いだし、過去作品のビジュアルやストーリーボード、イェーツ監督が求めるダンスのような優美さと組み合わせた。

 こうして、個々の呪文にポーズを与えるのではなく、攻撃と防御の基本姿勢から、さまざまな動きが派生する“魔法使いの身体言語”が作られた。

 「僕が作ったのは呪文ではありません。呪文を作ったのはJ.K.ローリングです。僕が作ったのは、その呪文をどのように放つかという身体表現です。言うなれば、魔法の言葉を書いたのではなく、“魔法の文法”を作ったのです」

■キャラクターの個性を動きに残す

 基本となる体系を作る一方、ハリス氏は全員を同じ動きにはしなかった。それぞれの俳優が作り上げたキャラクターの個性を尊重したという。

 例えば、ベラトリックス・レストレンジを演じたヘレナ・ボナム=カーターは、自身の爪の形に合わせ、杖も曲がったデザインにしたいと希望した。ヴォルデモートを演じたレイフ・ファインズにも、すでに独自の杖の持ち方があった。

 「僕の仕事は、全員の動きを同じにすることではありません。それぞれのキャラクターらしさを残しながら、一つの体系の中に組み込むことでした」

 死喰い人の恐ろしさも、杖の持ち方だけから生まれるものではない。重心移動や歩き方、体の向き、相手との距離の取り方まで、常に脅威として見えるように設計した。

 「恐ろしさは武器ではなく、身体から生まれるのです」

 『不死鳥の騎士団』では、シリウス・ブラックが命を落とす場面と、ヴォルデモートとダンブルドアが決闘する場面の振付も担当。シリーズを代表する二つのバトルシーンを、動きの面から作り上げた。

■「10年後には世界中の子どもがこの動きをする」

 仕事を依頼された当時、杖を使った身体表現がこれほど広く定着するとは、ハリス氏自身は予想していなかった。だが、イェーツ監督には先が見えていたという。

 「最初の打ち合わせで、デヴィッドは『10年後には、世界中の子どもたちがこの動きをしているだろう』と言いました。当時、それを想像できた人はほとんどいませんでした」

 撮影最終日には、当初その役割の必要性に疑問を抱いていたプロデューサーの一人から、「自分が間違っていて、デヴィッドが正しかったと言えることをうれしく思う」と声をかけられたという。

■20年後、東京初のライブパフォーマンスへ

 映画とライブパフォーマンスでは、演出するうえで求められるものも異なる。複数の映像を編集して一つの場面を作り上げられる映画に対し、ライブパフォーマンスは、観客の目の前で途切れることなく進んでいく。そのため、動きに説得力を持たせながら、緊張感を持続させることが重要になる。

 「観客の注意を引きつけ続けなければなりません。同時に、“実際に人がそう動くかもしれない”と感じてもらえる、説得力のある表現も必要です」

 映画で死喰い人を演じたのは、ダンサーやステージコンバットの経験者、フィジカルシアターを専門とする俳優たちだった。高い身体能力は必要だったが、必ずしも音楽に合わせて動く力が求められたわけではない。

 一方、今回のパフォーマンスは、音楽やナレーションと連動しながら展開する。動きやせりふを決められたタイミングに合わせる必要があるため、演者には高い身体能力に加え、音楽のリズムや展開を正確に捉える力も求められるという。

 東京で集められたダンサーたちについて、ハリス氏は「ロンドンと同等、あるいはそれ以上」と称賛する。

 「優れたダンサーは、どこの国の出身であっても優れたダンサーです。東京で集まってくれた皆さんは、本当に素晴らしい。必要なことを理解したうえで、適切な人たちが集められています」

 日本語と英語のナレーションを担当するのは、ハリス氏がロンドンの演劇学校で教えていた日本人の元教え子。2つの言語を操り、言葉を音楽に正確に合わせるだけでなく、死喰い人としてパフォーマンスにも出演する。

 観客には、スペクタクルを楽しむ人もいれば、死喰い人それぞれのキャラクターに引きつけられる人もいる。なかには、その姿を恐ろしく感じる人もいるだろう。

 「人によって見方は違います。僕はただ、目の前で起きていることを、それぞれの楽しみ方で味わってほしい。怖いと感じることも含めて、この体験を楽しんでもらえたらと思います」

■すべての核にあるのは物語

 「ハリー・ポッター」が長く愛されている理由を、ハリス氏は「登場人物の深さ」に見いだす。

 「長く愛される作品は、登場人物に深みがあるのだと思います。最も分かりやすい例がシェイクスピアです。作品が生まれてから400年以上経っていても、僕たちは登場人物に共感できます。

 『ハリー・ポッター』も魔法の世界を舞台にしながら、人々は登場人物に自分を重ねることができます。それは、物語の書き方が本当に優れているからです。すべての核にあるのは物語です。僕が身体表現を作るうえでも、常に物語が道しるべになりました」
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