2026/10/03 07:10
エンタメ総合
NEW 松重豊「死ぬ時までおいしいものを食べ続けたい」 食への興味失った長谷川あかりを救った“レシピ本”【“異食”対談中編】
松重豊、長谷川あかり (C)ORICON NewS inc.
俳優の松重豊が企画プロデュース・脚本・監督を手掛けるドラマ『おいしいのつくりかた』が、10月3日よりPrime Videoで独占配信される。長年『孤独のグルメ』で“食べる男”として数々のグルメと向き合ってきた松重が、“つくる“側の視点にたって、『孤独』スタッフと届ける、家族と料理の絆を描いた珠玉の“グルメヒューマンドラマ”。オリコンニュースでは、松重と料理家・長谷川あかりとの異“食”対談を実現し、作品に関するエピソードから、それぞれの分野での表現についてなど、ディープな話が飛び出した。
■老人ホームの撮影場所にこだわり「けっこう大変だった」 長谷川あかりの指摘に松重豊が熱弁
あるトラブルによって名門レストランを解雇され、人と距離をとり、心を閉ざしてしまった腕利きシェフ・水橋英二(北村有起哉)。彼が料理人として流れ着いたのは、とある老人ホームだった。一方、レシピ動画配信会社で働くディレクターの大沢加奈(のん)は、祖父・真路(中原丈雄)の死と、長年愛された洋食店「キッチン大沢」の閉店を突然知らされ、深い悲しみに暮れていた。一人残された加奈の祖母・智子(加賀まりこ)も、慣れ親しんだ家から老人ホームに入所したものの生きる気力を失い、食事すら楽しめない失意の日々を過ごしていた。
そんな智子は水橋の料理に出会い、彼の料理の美味しさに感動し、次第に笑顔を取り戻していく。さらに、水橋の作るポークソテーの味が「キッチン大沢」の看板メニューとまったく同じ味であることに驚く。すぐさま加奈に連絡して味を確かめてもらうと、加奈も祖父の味と同じだと感動する。不思議に思った加奈が調べたところ、水橋が祖父と同じ名門レストラン出身であることが判明する。祖父の味と店を守りたい加奈と智子は、トラブル以降心を閉ざしたままの水橋に、ある提案を持ちかける。
――それぞれの場所での“食の見せ方”というのも、意識的に演出をされている印象を受けました。洋食店「キッチン大沢」では“おいしいポークソテー”、加奈が働いている「レシピ動画配信会社」での“おいしく見える料理”、加賀まりこさん演じる加奈の祖母・智子が入所した「老人ホーム」での“料理の見え方”、そして「キッチン大沢」を守ろうと奔走する場面での加奈と、北村有起哉さん演じる腕利きシェフ・水橋がそれぞれの「自宅」で食べる“カップ麺”と、対照的なものでした。その辺りの演出の意図についてお聞かせください。
【松重豊】2人に同時にカップ麺を食べてもらうというのは、どんなにおいしいものに関わっている人たちでも、何か忙しかったり集中している時は、そういうものに頼ってしまう…というところは、日常的にリアリティーがあるだろうなと思いました。あとは、老人ホームも、今回取材をさせていただいたら、本当にいろいろな幅があったんです。「シェフが毎回料理を作ります」というところもあれば、「うちはお弁当です」というところもあって。でも、やっぱりそこで一生を終えるって、とても重大だなと感じたんです。だから、老人ホームで毎日作り手の真心を感じられるようなものを食べられるかどうかって、とても大事だなと思いまして。それで今回は、流れ者のコックが老人ホームの食を変えた…という設定にしました。単純に味付けとか火加減ひとつで(食材などに)お金をかけなくても、やっぱり違ってくるじゃないですか。
【長谷川あかり】今回のドラマでは、老人ホームの厨房が、入居者のみなさんが食べるところの目の前にあるという点も大事だなと感じました。
【松重】そうなんです!目の前に厨房があるという老人ホームを(撮影場所として)探すだけでも、けっこう大変だったんです。あそこは、食堂からちゃんと厨房の中を見渡すことができて。実はすごくいいんですよ。今回、実際にあそこの老人ホームに入居されている方々が、撮影にも参加してくださって。入居者のみなさんにとって、世代的にも加賀まりこさんは雲の上の存在のような方だと思うので、そんな方と一緒に“老人ホームの仲間”として出ることができ、一緒にごはんを食べるということでも、すごくみなさん気持ちが上がっていて、やっぱりそういうことだなと感じました。
【長谷川】私は、管理栄養士の資格を取る時、実際に老人ホームに伺って実習を行ったことがあるのですが、嚥下機能が落ちていて飲み込めないという方でも、好きな食べ物が出てきたら急に飲み込めるようになったりすることがあるそうなんです。目で見ておいしそうと思って、それをちゃんと認知して飲み込むっていう、たぶんすべての機能において、食って“奇跡”が起きるといいますか…。
【松重】起きますね!食ってやっぱり、脳にもダイレクトに刺激がいくので「あれ!これなんか食べたことある」ってなると、どんな方でもすごく鮮明に蘇ってくるものがあると、僕は信じますし、やっぱりおいしいものを食べることで人生を終えたいなと思います。「死ぬ間際に何が食べたいですか?」ではなくて、いや、まんべんなく死ぬ時までおいしいものを食べ続けたいなって。そんなぜいたくなものじゃなくても、おいしいものを食べ続けていたいっていうのは、実感としてあるんですよね。
■長谷川あかりの“原体験”「手のかかる煮込みを10時間かけて…」 松重豊『劇映画 孤独のグルメ』での“挑戦”回顧
【長谷川】キッチンだと、それこそ今回もドラマですごくステキな調理音をたくさん聞かせていただいて、癒しでした!目の前にキッチンがあって、音や作業しているところも、ちゃんとつながってくると、入居者さんたちも、ご飯のことをそんなに考えられていなくても、そういうものが見えたり聞こえたりするだけで違うのだろうなと思いました。
【松重】そういうことってありますよね。僕、学校の給食が大好きだったんですよ。小学校の頃の給食室の音と匂いとかって、絶対記憶の中にありますし、郷愁もあったりして。『劇映画 孤独のグルメ』を撮った時も、姿は見えないけど、チャーハンを作ってる音だけで、なんかよだれが出てくる…みたいなことは試してみたりしました。やっぱり、そういう音というものは大事だなって。厨房の音、料理をしている人の音だったりリズムだったりというものがワクワクする、そういった少女の記憶が、今回のドラマのベースにもなっています。
【松重】ところで、長谷川さんが今のような料理家になる原体験は何でしょう?
【長谷川】ありがとうございます。私は昔、子役をやっていたのですが、子役から大人になる時期で、オーディションにまったく受からなくなってしまって。それで、けっこう食欲が落ちてしまったことがあったんです。ストレスでまったくご飯が食べられなくなってしまったので、これはあまりよくないなと思っていたのですが、たまたま古本屋に行った時に、レシピ本を初めて見て。家で出てこない、知らない言葉がいっぱい詰まった、見たことのないおいしそうな料理がたくさん並んでいる写真を、雑誌や本で見たんです。それで、久しぶりにちょっとなんか食べられるかもと思って、自分で作って食べるようになりました。
【松重】最悪の状態から?それはすごいですね。実際に食べたわけでなく、写真を見ただけで、そういう気持ちになれたということですか?
【長谷川】写真と文章でした。『孤独のグルメ』や今回のドラマは、五感で刺激してくれるものでしたが、私が当時見たものは文章でも“おいしい”を表現する言葉が、すごく多種多様に並べられていて。「どんな味するんだよ!」と思ったんです。レシピってみんなが作れるように書いてあるので、それまで全然料理したことなかったんですけど、すごく上手に自分なりに作ることができたんです。
【松重】最初に何を作られたんですか?
【長谷川】なんかわけがわからないぐらい手がかかる煮込み料理を、10時間くらいかけて作りました(笑)。寸胴鍋で10時間煮込む料理だったのですが、寸胴がないのでパスタ鍋を引っ張ってきて、ずっと煮込んで。家族からは「ガス代がかかる」って怒られながら(笑)。やっぱり、10時間煮込んでいる間に、ずっといい匂いがしていて、そのイントロがあったので、おいしく食べることができました。
【松重】今回のドラマでは、加奈の幼少期のシーンから始まるのですが、鮭のソテーの作り方を口ずさみながら(想像で)作っているところから物語が始まっていて、そういう話聞くと(その演出が)間違っていないのかなと思いました。
――改めて、当たり前の話ではあるのですが、作品を通して、食というものは生涯にわたって向き合っていくテーマなのだと感じました。
【松重】飯島奈美さんがフードスタイリストを担当してくださったのですが、飯島さんが作る料理がとにかくおいしいんです。加賀さんには、今回のドラマで一番(品数を)食べていただいたのですが、加賀さんもおいしいと言って食べていらっしゃいました。今回は各年代のキャストがいるのですが、それぞれが食というものに対して、どう向き合って、どう心が動いていくのかというところを見ていただけるとうれしいですね。(後編に続く)
◇松重豊企画プロデュース・脚本・監督「おいしいのつくりかた」10月3日よりPrime Videoにて独占配信
◇長谷川あかり出演「たべるししゃべるし」はTVer、U-NEXTなどで見逃し配信中。
あるトラブルによって名門レストランを解雇され、人と距離をとり、心を閉ざしてしまった腕利きシェフ・水橋英二(北村有起哉)。彼が料理人として流れ着いたのは、とある老人ホームだった。一方、レシピ動画配信会社で働くディレクターの大沢加奈(のん)は、祖父・真路(中原丈雄)の死と、長年愛された洋食店「キッチン大沢」の閉店を突然知らされ、深い悲しみに暮れていた。一人残された加奈の祖母・智子(加賀まりこ)も、慣れ親しんだ家から老人ホームに入所したものの生きる気力を失い、食事すら楽しめない失意の日々を過ごしていた。
そんな智子は水橋の料理に出会い、彼の料理の美味しさに感動し、次第に笑顔を取り戻していく。さらに、水橋の作るポークソテーの味が「キッチン大沢」の看板メニューとまったく同じ味であることに驚く。すぐさま加奈に連絡して味を確かめてもらうと、加奈も祖父の味と同じだと感動する。不思議に思った加奈が調べたところ、水橋が祖父と同じ名門レストラン出身であることが判明する。祖父の味と店を守りたい加奈と智子は、トラブル以降心を閉ざしたままの水橋に、ある提案を持ちかける。
――それぞれの場所での“食の見せ方”というのも、意識的に演出をされている印象を受けました。洋食店「キッチン大沢」では“おいしいポークソテー”、加奈が働いている「レシピ動画配信会社」での“おいしく見える料理”、加賀まりこさん演じる加奈の祖母・智子が入所した「老人ホーム」での“料理の見え方”、そして「キッチン大沢」を守ろうと奔走する場面での加奈と、北村有起哉さん演じる腕利きシェフ・水橋がそれぞれの「自宅」で食べる“カップ麺”と、対照的なものでした。その辺りの演出の意図についてお聞かせください。
【松重豊】2人に同時にカップ麺を食べてもらうというのは、どんなにおいしいものに関わっている人たちでも、何か忙しかったり集中している時は、そういうものに頼ってしまう…というところは、日常的にリアリティーがあるだろうなと思いました。あとは、老人ホームも、今回取材をさせていただいたら、本当にいろいろな幅があったんです。「シェフが毎回料理を作ります」というところもあれば、「うちはお弁当です」というところもあって。でも、やっぱりそこで一生を終えるって、とても重大だなと感じたんです。だから、老人ホームで毎日作り手の真心を感じられるようなものを食べられるかどうかって、とても大事だなと思いまして。それで今回は、流れ者のコックが老人ホームの食を変えた…という設定にしました。単純に味付けとか火加減ひとつで(食材などに)お金をかけなくても、やっぱり違ってくるじゃないですか。
【長谷川あかり】今回のドラマでは、老人ホームの厨房が、入居者のみなさんが食べるところの目の前にあるという点も大事だなと感じました。
【松重】そうなんです!目の前に厨房があるという老人ホームを(撮影場所として)探すだけでも、けっこう大変だったんです。あそこは、食堂からちゃんと厨房の中を見渡すことができて。実はすごくいいんですよ。今回、実際にあそこの老人ホームに入居されている方々が、撮影にも参加してくださって。入居者のみなさんにとって、世代的にも加賀まりこさんは雲の上の存在のような方だと思うので、そんな方と一緒に“老人ホームの仲間”として出ることができ、一緒にごはんを食べるということでも、すごくみなさん気持ちが上がっていて、やっぱりそういうことだなと感じました。
【長谷川】私は、管理栄養士の資格を取る時、実際に老人ホームに伺って実習を行ったことがあるのですが、嚥下機能が落ちていて飲み込めないという方でも、好きな食べ物が出てきたら急に飲み込めるようになったりすることがあるそうなんです。目で見ておいしそうと思って、それをちゃんと認知して飲み込むっていう、たぶんすべての機能において、食って“奇跡”が起きるといいますか…。
【松重】起きますね!食ってやっぱり、脳にもダイレクトに刺激がいくので「あれ!これなんか食べたことある」ってなると、どんな方でもすごく鮮明に蘇ってくるものがあると、僕は信じますし、やっぱりおいしいものを食べることで人生を終えたいなと思います。「死ぬ間際に何が食べたいですか?」ではなくて、いや、まんべんなく死ぬ時までおいしいものを食べ続けたいなって。そんなぜいたくなものじゃなくても、おいしいものを食べ続けていたいっていうのは、実感としてあるんですよね。
■長谷川あかりの“原体験”「手のかかる煮込みを10時間かけて…」 松重豊『劇映画 孤独のグルメ』での“挑戦”回顧
【長谷川】キッチンだと、それこそ今回もドラマですごくステキな調理音をたくさん聞かせていただいて、癒しでした!目の前にキッチンがあって、音や作業しているところも、ちゃんとつながってくると、入居者さんたちも、ご飯のことをそんなに考えられていなくても、そういうものが見えたり聞こえたりするだけで違うのだろうなと思いました。
【松重】そういうことってありますよね。僕、学校の給食が大好きだったんですよ。小学校の頃の給食室の音と匂いとかって、絶対記憶の中にありますし、郷愁もあったりして。『劇映画 孤独のグルメ』を撮った時も、姿は見えないけど、チャーハンを作ってる音だけで、なんかよだれが出てくる…みたいなことは試してみたりしました。やっぱり、そういう音というものは大事だなって。厨房の音、料理をしている人の音だったりリズムだったりというものがワクワクする、そういった少女の記憶が、今回のドラマのベースにもなっています。
【松重】ところで、長谷川さんが今のような料理家になる原体験は何でしょう?
【長谷川】ありがとうございます。私は昔、子役をやっていたのですが、子役から大人になる時期で、オーディションにまったく受からなくなってしまって。それで、けっこう食欲が落ちてしまったことがあったんです。ストレスでまったくご飯が食べられなくなってしまったので、これはあまりよくないなと思っていたのですが、たまたま古本屋に行った時に、レシピ本を初めて見て。家で出てこない、知らない言葉がいっぱい詰まった、見たことのないおいしそうな料理がたくさん並んでいる写真を、雑誌や本で見たんです。それで、久しぶりにちょっとなんか食べられるかもと思って、自分で作って食べるようになりました。
【松重】最悪の状態から?それはすごいですね。実際に食べたわけでなく、写真を見ただけで、そういう気持ちになれたということですか?
【長谷川】写真と文章でした。『孤独のグルメ』や今回のドラマは、五感で刺激してくれるものでしたが、私が当時見たものは文章でも“おいしい”を表現する言葉が、すごく多種多様に並べられていて。「どんな味するんだよ!」と思ったんです。レシピってみんなが作れるように書いてあるので、それまで全然料理したことなかったんですけど、すごく上手に自分なりに作ることができたんです。
【松重】最初に何を作られたんですか?
【長谷川】なんかわけがわからないぐらい手がかかる煮込み料理を、10時間くらいかけて作りました(笑)。寸胴鍋で10時間煮込む料理だったのですが、寸胴がないのでパスタ鍋を引っ張ってきて、ずっと煮込んで。家族からは「ガス代がかかる」って怒られながら(笑)。やっぱり、10時間煮込んでいる間に、ずっといい匂いがしていて、そのイントロがあったので、おいしく食べることができました。
【松重】今回のドラマでは、加奈の幼少期のシーンから始まるのですが、鮭のソテーの作り方を口ずさみながら(想像で)作っているところから物語が始まっていて、そういう話聞くと(その演出が)間違っていないのかなと思いました。
――改めて、当たり前の話ではあるのですが、作品を通して、食というものは生涯にわたって向き合っていくテーマなのだと感じました。
【松重】飯島奈美さんがフードスタイリストを担当してくださったのですが、飯島さんが作る料理がとにかくおいしいんです。加賀さんには、今回のドラマで一番(品数を)食べていただいたのですが、加賀さんもおいしいと言って食べていらっしゃいました。今回は各年代のキャストがいるのですが、それぞれが食というものに対して、どう向き合って、どう心が動いていくのかというところを見ていただけるとうれしいですね。(後編に続く)
◇松重豊企画プロデュース・脚本・監督「おいしいのつくりかた」10月3日よりPrime Videoにて独占配信
◇長谷川あかり出演「たべるししゃべるし」はTVer、U-NEXTなどで見逃し配信中。











