2024年6月20日(木)
志事人
『志事人』
組紐の文化圏をつくる ~道明葵一郎~
2023年10月6日(金)放送分より
日本の伝統工芸である組紐 。
絹糸をくみ上げたその技術は、奈良時代に大陸から伝わったと言われており、今では、和装の帯締めなどに欠かせない日本伝統の小物として知られている。
その組紐の伝統を受け継ぐのが、株式会社道明 代表取締役社長の道明葵一郎 さんだ。
上野にある「有識組紐 道明」は今から372年前の承応元年(1652年)に創業した組紐の老舗中の老舗で、組紐商品の販売のほか、工房も併設している。
組紐はまず絹糸を染めるところから始まる。工房にある染場と呼ばれる作業場では、手作業で、絹糸を何度も何度も染液の入った鍋にくぐらせて、染料を定着させていく。そして染め上がった糸もまた、人の手で束ねられ、いよいよ組む作業に移る。
取材時は「高台」と呼ばれる道具で糸が組まれていく様子を見せてもらった。布を織る織機と似ており、交互に糸を上げ下げしていき、その間に糸を通して組んでいく。糸を打ち込む角度と力加減が一定でなければ綺麗な組紐は生まれない。
道明氏によると、手仕事によって組紐を作ることに、モノづくりへのこだわりがあるのだとか。「手で組むことで、伸縮性があり、風合いがよくてしっかりした、人間に馴染みやすい組紐を作ることができる」という。
また組紐には、いにしえからの技術や知識までも織り込まれている。道明家は、およそ100年前から、文化財に使われている組紐の「復元」も行ってきた。日本各地にある美術館や博物館、神社仏閣が所有している文化財に古い組紐が使われて残っていることがあるが、そうしたものを調査してきた。それらの色彩や構造、作り方を解明して、再現する。そうすることで、技術や知識を今の組紐に転用して伝えている。
こうして連綿と受け継いできた組紐の魅力を体験し、知ってもらおうと、2023年4月に東京神楽坂に「Kumihimo Experience by DOMYO」をオープン。ショップだけでなく、職人による実演やレクチャーのほか、実際に組紐を作る体験ができる。
道明氏は「モノを販売するというよりはコト消費。多くの人たちに技術を伝えたいし、非常に面白いものなんだということを伝えたい」と語る。
伝統的な帯締め、和装の世界での技術やデザインを深めていくことはもちろん、洋服にもアクセサリーやベルトなどに組紐を取り入れ、新たな組紐の使い方を開拓していくのも、自分の使命だと語る道明氏は、これからの組紐の仕事に対して、さらに目を輝かせる。
「いろいろな(他業種との)横のつながりを広げ、組紐の文化圏を作るという将来像、ビジョンを考えながら活動している」
それが組紐の仕事を続ける道明氏の志しなのだという。
※このコーナーでは、BS11の報道番組で放送した内容を元に記事にして掲載しています。
一部情報は掲載の時期によって更新されることもありますので、予めご了承ください。
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